世紀の御勝縁「法統継承式」に参拝して

■はじめに
 2014年6月6日、私たちの教団にとっては歴史的な日でありました。この日、本願寺において御門主さまのお代替わりの式典「法統継承式」が行われました。
 宗祖の七五〇回大遠忌が円成したこの時期、節目としては好機かと思いましたが、まだ即如ご門主は68歳、退任されるのは少しお早いのではないかと感じておりました。しかし、昨年12月には本山から、全国の末寺にその式典の実施案内が届けられました。
 前日の6月5日には即如ご門主退任の御消息発布式、そして翌6日に専如様への法統継承式が挙行されるとのこと。これまでの即如ご門主37年のご教導に感謝し、若きリーダー専如ご門主の継職を寿ぐため全国から多くの僧侶、門信徒が上山することが予想されていました。

■即如ご門主退任の御消息発布式
 5日は午後3時30分開式ということで、私は少し早い目、2時半には本山に着きましたが、本願寺境内は人人人、後日の報道によると6000人もの参拝者があったとか、すでに両堂は満堂、私は御影堂前白洲に張られた仮設テント内にようやくイスを見つけ、モニターを通しての参拜となりました。
結界の外は立錐の余地もない御影堂、そこにお裏方、新門様、新裏方様が御着座の後、即如ご門主が入堂、御門主として最後の御消息を発布されました。その中では、門主就任以来37年余を振り返りながら、仏祖のご加護と宗門内外の方々のお支えの中で、顕如上人四〇〇回忌、蓮如上人五〇〇回遠忌、宗祖聖人七五〇回大遠忌が厳修され、これらにともなって両堂の修復がなったこと、さらに、北境内地の取得が本願寺の活動をより広く展開させたと評価されました。また、基幹運動の推進とともにさまざまの活動や事業が展開され、世界各地にもお念仏の輪が広がっていることを、「巡教などによって身近に知り、御同朋の思いを確かめることができましたことを、まことに有り難く思います。」と述べられました。
 また、現代社会の様々な課題を示されましたが、「その中で、心残りは、浄土真宗に生きる私たちが十分に力を発揮できたとは言えないことです。」とご指摘になりました。さらに「これからも、社会の変動の中にあって、浄土真宗のみ教えや伝統にある多様な可能性を見つけ出し、各人、各世代、それぞれの個性と条件を活かし、特に若い世代の感性と実行力を尊重して、一人でも多くの方を朋とし、御同朋の社会をめざして歩むことができるよう願っております。」とお示し下さいました。
 御消息の最後は「なお、私は、七十歳まであと一年余りとなりました。先のことは予測できませんが、阿弥陀如来の揺るぎない本願力の中に、宗祖聖人のみ教えを仰ぎ、浄土真宗の僧侶としての務めを、できる限り果たしたいと思っています。」と締めくくられています。
 式終了後、この御消息は境内で、「本願寺新報号外」として参拝者に配布され、私も一枚頂き、現在それを拡大コピーして本堂に掲示しています。

■法統継承式
 6日の「法統継承式」はさらに多くの人出が予想されていましたので、開始2時間前に本山着、しかし、この日もすでに多くの方々(8000人に上ったとか)が白洲で入堂を待って長蛇の列、私もその後について、ようやく御影堂後ろの柱の陰に席を確保しました。畳の上はいっぱいの参詣者で身動きができません。入堂して開式まで1時間半、じっとその場で過ごしました。 第一部は、前日、御譲渡式を終えられ、正式に門主の地位に就かれた専如ご門主が御導師となって、阿弥陀堂と御影堂で厳かな法要が行われました。引き続いて御影堂で式典の部が挙行されました。
 メインは専如御門主の「法統継承に際しての御消息」発布です。それに続いて、御門主の「お言葉」があり、続いて即如前門主が「お言葉」を述べられました。御門主様は「御消息」の中で、御歴代のご教導に感謝するとともに、法統を継承したことの重い責任を披瀝されました。また、「宗門の過去をふりかえりますと、あるいは時代の常識に疑問を抱かなかったことによる対応、あるいは宗門を存続させるための苦渋の選択としての対応など、ご法義に順っていないと思える対応もなされてきました。このような過去に学び、時代の常識を無批判に受け入れることがないよう、また苦渋の選択が必要になる社会が再び到来しないよう、注意深く見極めていく必要があります。」と大切な視点をお示し下さいました。
 御門主様はこの御消息の最後を、「『自信教人信』のお言葉をいただき、現代の苦悩をともに背負い、御同朋の社会をめざして皆様と歩んでまいりたいと思います。」としめくくられています。また法要に引き続き行われた式典の部で述べられた「お言葉」の最後も同様です。「善導大師の『自信教人信』というお言葉をあらためてわが身のこととして受け止め、南無阿弥陀仏とお念仏申しながら、浄土真宗のみ教えを喜ぶ宗門の一員として、実践運動に取り組んでまいりましょう」と、身の引き締まる思いでお聞かせいただきました。
 そして、最後は前門さまとなられた即如様のお言葉です。「おかげさまで、この日を迎えることができました。」と予期せぬお言葉から始まる10分くらいのスピーチでしたが、大変感動的なものでありました。まず、前門様は「私と坊守裏方としての37年2ケ月を支えて下さった方々に、心より感謝申しあげます。」と述べられた後、次のように続けられました。「力の及ばなかった点が多々ありますが、皆さま、よく、辛抱してくださいました。それぞれの場で、努力を重ねていらっしゃる僧侶、寺族、門信徒の方々の姿に励まされた37年でした。」と何とも勿体ないお言葉で、私の周りにお座りになっている何人もが目頭を押さえられ、お念仏の声が堂内にあふれました。
 それに続けられたお言葉はこうです。「印象に残る事柄はたくさんありますが、あえて、二つだけ申します。一つは、組巡教を果たし遂げることができたことです。多くの方々のお世話になりました。さまざまの貴重な体験をいたしました。なかでも、組の連続研修の成果を実感する得難い機会でありました。もう一つは、念仏奉仕団のことです。宗祖聖人にお礼をし、自発的にご奉仕してくださることは、まことに有り難いことです。これこそ、本願寺は、平生もいきいきとしたお寺であることがわかる大事な活動です。」
 私たち御坊組も、この連続研修と念仏奉仕団を大事に取り組んできました。紆余曲折はありましたが、連研はこの7月から第7期目を迎えます。ここで学んで下さった方々が、各寺の総代さんや仏壮、仏婦の役員さんとして活躍して下さっています。現代社会におけるお寺と教団のあり方を考え、住職とともにお寺を支え、活性化させる「もの言う」門徒さんになっていただく連研の取り組みはこれからも大切にしてゆきたいものです。

■御坊組念仏奉仕団
 御坊組の念仏奉仕団は今年でもう、25年を迎えます。組総代会が主催し、毎年の上山を楽しみにしている常連の御同行もたくさんおられます。10回を超えで表彰された方もおられます。日頃、立ち入れない百華園での清掃奉仕は御門主さま一家を身近に感じさせていただく機会でもありますし、国宝「鴻の間」でのお茶の接待も、本山の誇り高い歴史と伝統を実感する得難い体験です。愛山護法、同心の方々との晩秋の京都への旅は楽しいものです。これからも続けていきたい行事の一つです。
この二つの取り組みを前門様が別して評価されたことは、それに心を砕いてきた私どもにとって大変嬉しいことでしたし、これからの取り組みに勇気を与えて頂きました。
 この度の「法統継承式」に参拝できたことは、私にとって本当に有り難いことでした。還暦を過ぎた私には、次ぎはありますまい。組内の御法中や御門徒の方々が何人も参拝されたと聞いていますが、なにせ、6000人、8000人の大イベント、自分の場を確保するのが精一杯で、どなたにもご挨拶することはできませんでした。いずれ、新門主様の継職をお祝いする「伝灯奉告法要」が執り行われましょう。その日には、みなさんこぞってお参りいたしましょう。その折りには、前門様のお元気なお姿にもお会いしたいものですね。
南無阿弥陀仏

(おことわり)
 堂内は原則撮影禁止ですので、アップに写っているものは、
モニターの画面を撮ったものです。
 最後の一枚は、一緒にお参りした長男と私です。当方のお代替わりの見通しは全く立っていません。

御坊組組長
湯川逸紀(三宝寺住職)

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